2011年4月14日木曜日

ラ・フォル・ジュルネ開催中止

今の時点ではまだウェブサイトには掲載されていませんが、ゴールデンウィークのラ・フォル・ジュルネが震災の影響で開催中止されることになったとの知らせが、ラ・フォル・ジュルネの「フレンズ」登録者へのメールで届きました。私は震災前にラ・フォル・ジュルネの運営事務局のかたたちにお会いし、独特のビジョンを持ってこのイベントを企画・運営されている様子にとても好感をもっていました。今回のラ・フォル・ジュルネは様々な角度から取材・見学させていただく予定でもあったので、キャンセルとなったことはとても残念です。でも、私はともかく、運営事務局のかたたちの気持ちを考えると本当に胸が痛みます。2005年に始まったときにはきわめて実験的な試みだったこのラ・フォル・ジュルネを、数年間のうちに東京のゴールデンウィークの風物詩のような認知度をもつ巨大なイベントに育て上げ、今回の企画にもすべてのエネルギーを注いできたかたたち。(ちなみに、「タイタンたち」という今回のテーマは、ひとりの作曲家に焦点を絞った前年までの企画よりもコンセプトがさらに興味深かったと思います。)震災後も、演奏家や各方面の関係者たちの理解と協力のもとに、予定通りの開催を決断した姿勢は、実に立派だと思っていました。でも、会場の一部に電源系統の不具合が見つかったこと、また、原発事故の国際原子力事象評価尺度がレベル7に引き上げられた結果、出演をキャンセルする海外アーティストが相次ぎ、実施が困難となってしまったそうです。

地震・津波で命を落とされたかたたちはもちろん、被災地で家族や家や生活の糧を失ってしまったかたたちとは比べものにならないものの、自分がこれまで何年もかけて築いてきたものを、こうした不可抗力で失ってしまうという意味では、会社や工場を流されてしまったり農業を営めなくなってしまった人たちと同様、こうした企画に携わってきた人たちも被災者の一部。もちろん、ラ・フォル・ジュルネに限らず、このような形で、これまですべてを賭けて頑張ってきたことが震災によって水の泡になってしまったという人は、全国に数多くいるはず。だからこそ、震災が東北・福島に局地化された問題ではなく、まさに日本全体にとっての苦難として理解され、全国的な一帯感も生まれているのでしょうが、さまざまな分野の人々の精神的ダメージを考えると、言葉を失います。道路や鉄道が開通するのと同じように人々の精神的エネルギーが取り戻せるか。さまざまな意味での「復興」には、被災地に限らず多くの人々の心のケアがとても重要になってくると思います。