2009年11月20日金曜日

Mary Karr, LIT

連休の週末に街に出ても人混みでどっと疲れるだけなので、昨日の夕方から家でゆっくり本を読んでいます。普段はなんだかんだと締切だの用事だのがあって一日ゆっくり本を読むなどということはめったにできないのですが、こうしてちょっと仕事が一段落ついたときに、好きな時間に好きなだけ本を読めるというのは、一人暮らしの特権のひとつであります。

で、ここ昨日から今日にかけて読みふけったのが、詩人Mary Karrの回想録、Lit: A Memoirという本です。このブログで何度も言及しているNPRのFresh Airという番組で著者がインタビューされているのを聞いて興味をもち、アマゾンで購入しました。テキサスの小さな町で、アルコール依存症や神経衰弱を繰り返した母親のもとで育った子供時代(については、彼女の以前の著作にもっと詳しく描かれているようですが、私はそれを読んでいません)から、きわめて裕福な環境で育ちながら禁欲的な文学者としての道を選んだ男性との結婚生活、自分自身のアルコール中毒そして死の近くまでいった神経衰弱、そしてスピリチュアルな鍛錬を通じての精神的・経済的回復と自立、息子との関係などを追った回想です。このように説明するとせっかくの休日をわざわざこれを読むのに使おうと思うような題材にはとても聞こえないでしょうが、確かにハッピーな気分に満ちた本ではないものの、辛い話のなかにも自分を冷徹に見据えているものならではの強さとユーモアがあって、勇気と希望を与えてくれる本でもあります。自分を傷つけたり苦しめたりした相手について、決して嘘っぽい美化をしたりはしないと同時に、心の底では愛情を失っていない、ということも伝わってきます。(そうした意味で、しばらく前に読んだNick FlynnのAnother Bullshit Night in Suck Cityに通じるものがあります。ちなみにMary KarrとNick Flynnは友達同士らしい。)スピリチュアルな発見とか宗教的な目覚めといった話題は、正直言ってどうも苦手で、普段はわざわざ本を買って読んだりはしないのですが、著者の話しぶりがとても地に足がついていて親しみがもてた(著者自身、宗教や神といったものにはずっとまるっきり関心がなく、スピリチュアルなものに心を開くということ自体が彼女にとってとても大きなステップだったということが、インタビューからも本からもわかります)ので読んでみたのですが、無宗教の読者にもとても響いてくるものがあります。興味をもって、Mary Karrについてネット検索してみたのですが、ちなみに彼女ははっとするほどの美人で、しかもその美人のありかたが、日本ではあんまり見ないタイプの美人なのです。興味のあるかたは、本、インタビュー、写真ともに是非チェックしてみてください。