2009年9月13日日曜日

フレデリック・ワイズマン映画特集

アメリカのドキュメンタリー映画監督フレデリック・ワイズマンの作品18本が一気に上映されるという企画が、渋谷ユーロスペースで今週末始まりました。ワイズマンは、弁護士・大学教授を経由して映画監督になった人物で、1960年代から、学校、病院、軍隊、教会、議会などの組織に焦点をあてたドキュメンタリー作品を多数製作し、アメリカ社会の様相にえぐり込んでいます。芸術にも造詣が深く、とくにバレエが好きで、パリのオペラ座を描いた最新作が今秋公開になりますが、今回の特集はそれを記念しての企画です。私が見たことがあるのは、「高校」と「ドメスティック・ヴァイオレンス」と「州議会」ですが、ナレーションや音楽・効果音などのない、実に淡々とした作りでありながら、いやむしろそうだからこそ、とても深くものを考えさせられます。わかりやすいメッセージや安易な結論がなく、いろいろな角度からものごとの複雑をとらえ、見ている者が自分で考えることを強いる作品(しかも、近年の作品はどんどん長さが長くなっていて、ヘビーな題材に延々3時間近くも向き合わされる)ばかりなので、見ていて「楽しい」とは言えませんが、とても勉強にはなります。去年ワイズマン氏がしばらくハワイ大学を訪れ、私も一緒に食事をしたのですが、とくに夫人が私の研究に興味を示してくれ、「是非とも本を読みたい」と言ってくださって本をホテルに届けたということもあって、私はひいきにしています。彼の作品を見たことがない人は、是非どうぞ。