2009年1月29日木曜日

オバマ大統領 Lilly Ledbetter法に署名

今日(アメリカ時間木曜日)大統領になって初めてオバマ氏が署名した法案が、Lilly Ledbetter Fair Pay Actであることには、女性史を教えているものとして感慨深いです。この法案は、男女間の賃金差別に関する訴訟をしやすくするものです。Lilly Ledbetterとは70歳になる女性で、工場の監督として大手タイヤメーカーのGoodyear社に19年間勤め、そのキャリアの終わり近くになって、自分と同じ内容の仕事をしている男性が自分よりも二割高い賃金を受け取っていることを知り、雇用上の平等を保障する公民権法第7編に反するとして会社を訴えていました。会社が違法行為をしたと陪審員が判断したにもかかわらず、2007年に最高裁が、不平等な賃金が払われた最初の日から180日以内に訴訟手続きをしなければこの件は無効であるとの判決をくだしたことによって、賃金平等の実現が滞っていました。今年に入ってこの法案は下院・上院の両方をスムーズに通過し、選挙キャンペーン中一貫してこの法案の支持を表明していたオバマ氏が、最初に署名する法案となりました。この法案によって、賃金差別を受けた人は、不公平な賃金を受け取った最初ではなく最後の日から180日以内に手続きをすれば、訴訟は有効となります。これによって不当に低い賃金を受けている女性の経済状況も改善するし、訴訟を恐れる雇用者があらかじめ賃金格差をなくす措置をとるようにもなるはずです。

この立法を可能にしたLilly Ledbetterという女性が、フェミニズムだとか女性の権利だとかいうことを叫ぶ活動家ではなく、家族を支えるために真面目に工場で働いていたごく普通のおばさんです。さまざまな不公正を是正するには、多数の人々を動員しての社会運動ももちろん必須ですが、それと同時に、一般市民の一人一人が勇気とエネルギーを絞り出して、面倒で不愉快で長引く裁判にのぞむといった行為によって、少しずつ歴史が変わっていくのだ、ということを学ばされます。この立法は、Lilly Ledbetterさんのケースにはなんの効力もないので、彼女自身はこれによって一ドルとも手にすることはありません。それでも、このひとりのおばさんの勇気とねばりが、これから先のアメリカの女性の経済的地位にとても重要な遺産を残すことは間違いありません。オバマ大統領が、署名の場で、自分のおばあさんと娘たちに言及しているのがなかなか感動的です。「経済がうまく動くためには、すべての人にとってうまく動く経済でなくてはいけない」という一言にも、希望を与えられます。この法案の詳細については、こちらをどうぞ。